書評:「学力の経済学」by 中室 牧子
タイトルは固いですが、読みやすくて一気に読んでしまいました。
概要は学校教育や子育てなど、どういった教育が子供にとって良いのかを経済学的にデータを使って議論していく本。学校教育や子育てなど、定量化しにくい教育方法を統計データを使って分析していくのが教育経済学で、著者の中室牧子さんはその専門家です。(コロンビア大学でPhDとは素晴らしい!)2017年現在は慶応義塾大学の准教授をされているようです。
書評
へえーと思わされることがたくさん書かれていました。
例えば、
- 褒めるときは、才能(あなたはやれば出来るのよ)ではなく努力(今日は1時間も勉強出来たね)を褒める
- 幼児教育は学力以外の能力に効果があり、その能力が社会に出た時に圧倒的に大切
- ご褒美で釣るとき、アウトプット(テストの点)ではなくインプット(勉強時間)に対してご褒美を与える
これらすべての結論はデータに基づいていて、引用文献もあるので非常に説得力があります。しかも結論は質的(才能ではなく努力を褒めるべき)ではなく、量的(努力を褒めた場合、才能を褒めた場合よりも〇〇%テストの点が上がる)です。著者の視点がかなり中立的なのも好印象です。さすが研究者という感じ。
テレビやインターネットで議論される場合、どこからデータとってきたの?とか根拠は?と聞きたくなるようなことが多々あるのでウンザリしていました。しかも本にも書かれていますが、教育分野はデータが少なく定量的に議論しにくい分野なのでなおさらです。「学力の経済学」ではそんな教育方法の既往研究が、一般人にも分かりやすくうまくまとめられています。